生活と馴染み深い革製品ですが、革製品の元になる動物は牛や馬、羊など様々で、その加工方法に関しても多くの種類があります。
革の種類や特徴を知っておけば、実際に購入する際にどんなものか想像できますから便利ですね。
革の世界の奥深さを知ることで、レザーの魅力を存分に味わってみませんか?
今回はレザーの種類と特徴をまとめてみました。
革(レザー)の基本知識
まずは革の基礎知識から学んでいきましょう!
皮と革の違い
皮と革、読みは同じですが意味は違います。
まず、皮というのは動物の体からはいだままの状態にしておくと当然ですが腐ったり劣化してしまいます。
そこで、皮が腐ったりしないように”鞣し(なめし)”という加工をすることで、腐敗しにくく、強くしなやかにします。
それこそが製品としての『革』です。
つまり、なめしたものが革であり、そうでないそのままの状態のものが皮ということです。
鞣し(なめし)とは?
鞣しの工程では、動物性脂肪を取り除くことで、腐敗を防ぎ、タンパク質を変性させることで耐久性、可塑性を向上させます。
また、柔らかくするために油脂を加えます。
鞣しを終えたものは、更に仕上げの加工をされ、いろいろな革となります。
安い革と高い革の違い
安い革と高い革の違いは、革そのものの品質、そして加工の違いです。
一般的な安い革は、コストの安い皮をコストの安い鞣し型と加工で仕上げます。
例えば安い皮の多くは、傷やシミのある皮で、そのままでは使えないので表面を樹脂や顔料で分厚く塗装して傷を隠して仕上げます。
ですからこれらの革は保湿クリームなどの浸透性が悪く、経年変化(エイジング)があまり楽しめませんが、手入れが簡単です。
対して高い革は、傷やシミの無い皮を、素材の味を活かすために無塗装、若しくはアニリンなどの薄い塗装で仕上げます。
ですから高い革は保湿クリームなどの浸透性が良く、エイジングが楽しめますが、手入れが難しく、しっかりとした知識が必要です。
鞣し, 革, 仕上げの3要素で決まる
革の種類は数多く有りますが、革の種類、鞣しの種類、仕上げの種類の3つの要素の組み合わせによって決まります。
この事がわかるようになれば、名前だけでどういった革なのか分かるようになりますね。
鞣しの種類
それでは、まず鞣しの種類から学んでいきましょう。なめしの種類は大きく分けて2種類で、それ以外の鞣しが僅かに有ります。
(ベジタブル)タンニン鞣し
植物由来の物質であるタンニンを鞣し剤として用いる方法です。時間と手間がかかるので、コストがかかります。
革の特徴は以下のようになります。
- 硬く、丈夫でしっかりとしている
- 切り口が茶色い
- 染色しやすい
- 吸湿性に富む
- 使い込むほどに味が出る
昔ながらの鞣し方法で、味わい深いのが特徴です。
クロム鞣し
化学薬品であるクロム化合物を用いて行う鞣し方法で、時間と手間がかからず低コストです。
特徴として
- 切り口が青白色
- 伸縮性、柔軟性に優れる
- 吸水性が低く、水をはじきやすい
- 発色がはっきりとしている
- 比較的熱に強い
クロム鞣しは100年ほど前に開発された画期的な鞣し方法で、現在流通している革の90%を占めていましたが、焼却時に有害な6価クロムを発生させたり、クロム排水問題など、環境に対する影響が懸念されています。
その他の鞣し
混合鞣し(コンビネーション鞣し)
名前の通りタンニン鞣しとクロム鞣しを組み合わせた鞣し方法で、タンニンなめしのような風合いの革を低コストで生産できます。
アルデヒド鞣し
化学物質であるアルデヒド化合物による鞣しで、クロムを用いない環境にやさしい鞣し方法として注目されています。コストやや高め。
革の種類
革の種類についてです。こんなに沢山の動物の革が使われているんですね!
牛革(カウレザー)
皮革製品としてもっとも多く利用されているのが牛皮です。牛の成育具合に応じて牛皮の中にもいろいろな種類があり、それぞれの特徴があります。靴やバッグ、ベルト、家具などに用いられます。
カーフ
出典:http://www.kabanya.net/weblog/
生後約六ヶ月以内の皮で、キメが細かく、薄い。生産量が少ないので、牛皮の中では最も高価な部類です。
上の画像は、カーフの中でも最高級と言われるドイツ、ベリンガー社のクリスペルカーフ。
キップ
生後半年から1年以内の皮で、カーフよりも厚く、強度もある。
カウ
生後2年以上のメスの成牛の皮で、厚みはステア、ブルよりも薄い
ステア
生後3ヶ月〜半年以内に去勢し、生後2年以上経過したオスの皮で、厚みが平均している。牛皮の中で最もポピュラーな皮
ブル
生後3年以上経過したオスの成牛の皮で、繊維が荒く、厚く、丈夫。
馬革(ホースレザー)
馬の皮は一般的に牛皮に比べると厚み、強度は高くありません。(コードバンは除く)その代わり馬皮は柔軟性に優れているので、ジャケット等の衣類や、ソファ等の家具によく用いられます。
コードバン
農耕馬のお尻部分から取れる皮で、繊維が非常にキメ細やかで、硬く、強靭な革です。生産量が限られているため、非常に高価です。
また、その希少性、美しさ、強靭さから、革のダイヤモンドとも呼ばれます。
一見表側のように見えますが、コードバンは革の内側部分です。
コードバンは革の中でも別格の革だと覚えておきましょう。
豚革(ピッグスキン)
唯一国内で自給自足が出来ているのが豚革です。小さな穴が無数に空いていますが、それは毛穴です。そのため通気性に優れ、軽くて薄く、摩擦に強いなどの特徴があります。その特徴からバッグの内装や靴の中敷きなどに用いられています。
スエード調のピッグスエードは人気が高く、輸出も多いです。
やぎ革(ゴートスキン)
出典:ALZUNI
表面に独特のシボ(しわ)が有り、薄いですが強度に優れ、柔らかいのが特徴です。仔山羊の皮はキッドスキンとも呼ばれ、ゴートスキンより更に薄く軽いので、高級靴や手袋、衣類などに用います。
ひつじ革(シープスキン)
出典:クツゴト
薄くて柔らかく、キメが細かいですが、繊維が粗いため、強度が必要な靴などには利用されません。生後1年以内のものはラムスキンとも呼ばれます。
また、ニュージーランドなどのメリノ種の羊の毛皮はムートンとも呼ばれ、コートなどの衣料品に使われています。
シカ革(ディアスキン)
日本でも馴染み深い皮で、柔らかで手触りがよく、耐水性に優れるといった特徴から、武具や衣類に用いられてきました。
仕上げ・加工の種類
表面の加工方法から、染色など様々な仕上げや加工があります。複数の仕上げや加工が施されているものも勿論有りますよ。
この加工を経て、革はようやく製品となっていきます。
ヌメ革
ヌメ革とは、タンニン鞣しを施しただけの染色、加工がされていない革のことを言います。革そのものの風合いと使えば使うほど深まる味わいが魅力です。
高い強度と使うほど馴染んでくるという革製品本来の魅力を持っています。
オイルレザー
オイルレザーとは、鞣しの段階、もしくはその後に、オイルを含ませることで、よりしなやかに、より丈夫に仕上げたものです。
ヌメ革に比べて傷に強い特徴があります。
スエード
鞣した革の内側をサンドペーパーなどで磨いて毛羽立てたものをいいます。起毛感が有り、温かみのある肌触りが特徴で、近年では、カーフやピッグスキンを用いることが多いです。
ヌバック
スエードが革の内側を起毛させるのに対し、ヌバックは革の外側(表側)を目の細かいサンドペーパーなどで削ったものを言います。
スエードと比べて毛足が短く、キメも細かいので、マットでサラッとした印象になります。
シュリンクレザー
シュリンクレザーは、なめしの段階で特殊な薬品につけることで、革の表面を縮ませたものです。これにより、革本来のシボ(しわ)が更に強調され、独特の風合いになります。柔らかく、傷が目立ちにくいのが特徴です。
薬品を使わず革を揉むことでシボをつける手法をもみ革といいます。
型押し
革を鞣したあと、革の外側をプレスすることによって独自の模様をつけるのが型押しです。
エンボスレザーとも呼ばれ、ヘビ、ワニなどの爬虫類を模した型が多いです。
エナメルレザー
エナメルレザーとは、エナメルと呼ばれる塗料を革の外側に塗布したものです。ツヤのある光沢感と硬質感が特徴で、水分を弾きます。
銀付き革
革の銀面(毛の生えていた側の表面)をそのまま使用している革のことで、革本来の風合いを楽しめる反面、傷やシミのない状態の良い革しか使えないので希少な分高価になります。
仕上げ剤としてカゼインやラッカーをもちいたアニリン仕上げがほとんどで、代表的なものにカーフをクロム鞣しした後、揉み込んだ後仕上げを施したボックスカーフなどがあります。
ガラスレザー
革の銀面を削って除去し、顔料や合成樹脂などで塗装したものを指します。ガラスレザーは銀面を取り除くため、傷やシワを隠すことが出来て安価に供給されますが、経年による革の変化は楽しめませんし、風合いも銀付き(銀面を削っていないもの)に比べて劣ります。
また、クリームなどで油の補給などが出来ないのもデメリットです。
しかし、顔料や合成樹脂によっては、クリームによる手入れが可能でエイジングが楽しめるものも有りますので、今後の科学の進歩が楽しみなレザーでもありますね。
ブライドルレザー
タンニンによる鞣しをした後染色し、数ヶ月かけて蜜、蝋を染み込ませた革をいいます。乗馬の鞍などに使われるほどの非常に強い耐久性と蝋による美しいツヤが魅力で、非常に手間がかかるため、高価です。
また、表面にブルームと呼ばれる白い粉が浮き出ることが有りますが、これは細部まで染み込んだ蝋が表面に出てくる現象で、良質なブライドルレザーの証でもあります。
最後に
革の種類と特徴はおわかり頂けましたか?
これから奥が深い革の魅力をもっと伝えていこうと思います!